社会性はどのように育まれるの?

あおぞら学校の理念に「社会性との調和」というのがあります。

これについては「個性を生きる」つまりは「自分の感情を認める」ということを意識して生きれば自然とついてくるものなので、あおぞら学校の生徒達が社会性と調和することを中心に考えているということはあまりないと思いますが、

「自由な学校」と聞くと、「社会性は無くて大丈夫なの?」と感じる大人の方はいらっしゃいます。つまり、個性を生きることと社会性が育まれることに繋がりが無いと思い込んでいる人は意外と多いのかもしれません。

ちなみに、心理学者の間では「社会性とは何か」という定義は定まっていないそうです。

確かに「社会性とは」ということを誰かに教えるとなると難しいですよね。頑張って言葉にして、「空気を読むこと」が精一杯な気がします😅

個人的には「社会性を育むために」という意識で何かをしようとしたり、子どもにやらせようとしたりするのはとてもナンセンスだと思うのです。

ですが、社会性が育まれる原理のようなものはあるので、知っていたら自分自身にとっても子を持つ親の立場にとっても役立つ知識になり得ます。

↓この図説だと、3歳くらいから社会性の芽生えがあることになります。

6歳までにある程度社会性が育つための準備が整うのかと考えると、小学校入学時期は理にかなっていますね。

ですが、小中高大を卒業しても感情を人前で無闇に剥き出しにしたり、泣き落とし作戦のようなことをする大人はいますよね。「(3歳以下の)子どもかっ」と突っ込みたくなります😅

暴力、いじめ、パワハラ、毒親、ブラック企業、DVなど、大人社会でメジャーな問題は社会性のある大人の行いとは言えませんね😓子ども達にはお恥ずかしい話です。

というわけで、普通教育機関で社会性が養われるかどうかは別問題だと思うのです。日本の識字率が100%なのは普通教育機関のお陰はかなりありますけどね。

 

さて、子どもと言えど、6〜7歳の小学校入学以降には「他人に迷惑を掛けてはいけない」「自分の事や物は自分で管理する」「他人の気持ちも大切にする」ということが腑に落ちている、または反抗心無くこれらに関しての注意事項を守れることが求められる立場になります。

そのためには、「離別感」を味わうことを済ませていることが必要で、その後の社会性が身につくかを左右します。

 

「離別感」については簡単に説明すると、「他人も自分と同じように心があるんだ」という気づきのことです。

「離別感」の一段階前を「母子一体感」と言います。

赤ちゃんがお母さんの都合など考えずに夜泣きしたり、わがまましたりする段階を「母子一体感」と言い、そこから、「お母さんにも感情があるんだ」と気付く段階を「離別感」と言います。

他人の気持ちが予測できたり、思いやったりできるとされる段階に入るのですね。5〜6歳くらいから習得できるものだそうです。

 

つまり「離別感」の体験が済んでいない人は「他人の感情なんて自分には関係無い」という「母子一体感」のアイディアが根底には残っているのです。

子どもの年齢ならただの「甘えん坊」で済ませられますが、思春期あたりから悪質、陰険な事を他人にしたり、大人になってもそれをやめられないということがあるので、子を持つ親の立場としては、「離別感」について理解しておくことは重要だと思います。

私自身が感じるのは、「離別感」は勝手に段階に入るものではなく、「家庭環境」が重要だということです。「離別感」を得るのに妨げになるような家庭環境もあるということです。「離別感」は年齢が上がるだけが習得できる条件ではないからです。

つまり、「家庭環境」は教育機関より「離別感」についての影響は大きいのです。

小学校入学前の時点で「離別感」が確立していない人が集団に入っても「離別感」も「社会性」も得られないと私は思うのです。

教育機関は「離別感」の習得が済んでいることを前提にしているので、「離別感」を習得していない児童は先生やお友達の手を焼く存在になり得ます。

つまり、自分のことを話せること以外に他人の気持ちや意見を傾聴できるなら「社会性」が身に付きます。ですが「離別感」を得ていない人にとっては他人への傾聴はかなり難しいことになります。

そうなると「離別感」についてあまり認識されていない現代社会にも問題はありますが、その問題を回避する術はありますし、簡単です😊

 

まず、自分のお子さんに「離別感」を得て欲しかったら「どんな気持ち?」と尋ねることを心掛ける。ただこれだけ。もちろん、その後に「あーそうだったんだぁ」みたいな共感はセットです。

例えばお子さんが「学校を休みたい」と言ったとします。これに対して、「理由は?」と尋ねるだけだと「離別感」習得とは結び付かないのです。

因みに、私の娘は4歳の時に「保育園に行きたくない」と言い出しました。もれなく「なんで!?」と聞きましたけどね😅 当時の私も「理由」を聞きたかったし知りたかったのですが、幼い娘に理由説明は難しく、「良い気持ちなのか嫌な気持ちなのか」という気持ちだけは聞くことができました。

当時はそれだけしかわからないことに戸惑いましたが、今思えばそれだけで良かったんです。後々問題解決もできましたしね♫

問題解決を急ごうとすると「理由」を言わせたくなりますが、解決を急がないことも大切な場合が多いのです。

例え「嫌だから」という返答がお子さんからあったとしても、その原因を取り除いたり解決しようと親だけが頑張るのは時として余計こじれたりします。

「手伝って欲しい」とお子さんがサインを出してくるまで具体的な手出しは待ちましょう。「気持ちを聞いてもらう」ということだけで前進できるのが子どもの凄いパワーです。

自身の経験だと、ゆっくりお風呂にでも浸かって話すとお互いリラックス状態で話せました。毎日というわけにはいきませんが、子どもが小さいうちだけの大事な時間です😊

言葉が発達していて、理由を話すことが上手だったとしても「気持ちを話す」ということは欠かしてはいけません。

理由説明は気持ちを話すこととセットにしないと、気持ちの整理がつきにくくなるという子ども達の姿はよく見られるのです。

犯罪心理学者の方のお話でも「気持ちを尋ねる」事の重要性は出てきます。少年犯罪をする子ども達には「上手に言い訳をしようとする」「自分の気持ちがわからない」という特徴はよく見られるそうです。

「離別感」ができていない人の特徴なのかもしれませんね。

そして、親の立場から何か伝える時は、i(アイ)メッセージ(「私は」を主語にした文章で話すこと、「私は良い(悪い)と思うよ」など)で伝えることが次に大切だと思います。

iメッセージは自分の気持ちを伝えるツールとしては最適なので、親子がお互いにこのようなコミュニケーションを心掛ければ気持ちを伝え合う関係になれるんですね。

家庭環境に「気持ちが伝え合える関係性」があることはお子さんにとって後々強みになる事請け合いですね!「気持ちを伝え合う」ことで「他人にも自分と同じように心があるんだ」ということを深く理解できる器ができるのです。

 

ですが、自分の気持ちを上手く説明できなかったり、iメッセージの使い方がよくわからないという大人の方は結構多いので、その状態で子持ちとなると、いささか心配ではあります😓

すでに自立した大人の年齢に達しているけど「離別感」の習得体験が済んでいないという人は実は多くいます。

まずは自分がそれに該当しているかに気付くことですが、もし気付けたなら、その時から「喜怒哀楽の感情を感じ切る」ことを始めましょう。

具体的には、自分のお子さんに「どんな気持ちだったの?」と質問するように、自分自身にも「どんな気持ちだったの?」と尋ねるのです。そしてちゃんと自分自身に返答しましょう。

幼いお子さんはお母さんの助けが必要ですが、大人の方は「離別感」を得るためのセルフトレーニングが可能なのです。

本当はどなたも自分の親から「離別感」を教わるのが自然なのですが、日本の歴史上の問題でそれが叶わなかったというご家庭は今でも多いです。

ですが、現代社会に生きる他のみんなにも同じ課題があるので、被害者意識でいたり、他者と競争したりせず、仲間意識で頑張ることが楽しむ秘訣かなと思います。

特に夫婦は最高の仲間になり得ます😊

 

少し話は変わりますが、お子さんに関わるお仕事をしていて目にした例で、

「我が子が学校でお友達にカンチョウをして、お友達をすごく怒らせてしまった。カンチョウをした理由は朝礼中に暇だったからだと。」

というお話がありました。もちろんご両親から「それはやってはいけないこと」と話したそうですが、カンチョウをしてしまった本人の様子としては、「カンチョウはしない」という感じで、その他の嫌なことを他人に言ったり、わざと意地悪をするなど他人の困るところを喜ぶ傾向にはありました。

「自分がされたら嫌だとはわかるけど、他人にすることはやめられない」

と本人が話してくれました。

また、別のお子さんで、ヒステリーを起こしたり、黙り込んだり、嘘をついたりということが癖になっているケースで、

本人が「他の人がやっていたら嫌だなと思うけど、他にどうしたらいいかわからない」

と言っていました。

他人に迷惑を掛けたり、傷付けてしまっていることはすぐに止めさせなければいけません。その後はやはり、どんなことに対しても気持ちを話すという訓練を親子でしていくしかないと私は思うのです。

特に、人を傷つけることを選択してしまっているお子さんは他人の気持ちがわからないのはもちろん、「自分の気持ちがわからない」となってしまっていることがあります。むしろ気持ちだけ話してくれればいいのに、6歳くらいで言葉の遅れはないのに、自分の気持ちが話せない状態にあったりします。

そこからスムーズに自分の気持ちを離せるようになるまでは時間がかかるかもしれませんが、親子でやるしかありません。教育機関やカウンセラーがいかに優れていても「親子」の関係を超えることはありません。

というわけで、「母子一体感」が続いている我が子は決して「放置」してはいけません。地道な作業だったとしても、例えお子さんが20代でも30代でも親がケアしてあげればいいと思います。

あ、もちろん大人の年齢の方は親を頼らずともセルフでできますが、自分に「母子一体感」を求める感情、つまりは他人に無理をさせてでも甘えたいなどと思う感情があるなら放置はダメです。セルフケアを試みましょう。

 

「離別感」を獲得できたかな?という確認は以下の項目について、お子さん本人が腑に落ちているかが判断の参考になります。

  • 危険行為
  • 迷惑行為
  • 規範意識
  • 自分の学習状況を把握
  • 挨拶
  • 感謝の言葉

↑これらの姿勢は社会で生きる基本の「き」です。これらが腑に落ちていないお子様には

「危険なことはしてはダメだよ」「人に迷惑を掛けてはダメだよ」などとまず教えるとして、

それだけでは不十分です。それとセットでどんなことも、どんな時もまず、

「どんな気持ちだったの?」

まで話し合う、まずは親子でここからです。

というわけで、「離別感」を獲得できていない、または「母子一体感」が残っているという状態で「個性を生きる」ことはかなり不利になります。

「社会性」自体は家庭の外で育まれますが、それに欠かせない「離別感」は幼いお子さんにとっては家庭以外では得られないと考えるのが自然だと思うのです。